東京某所某出版社の某一室で、野心的な麻雀ライター福地誠は用意したICレコーダーを操作しながら、成岡にインタビューを始める。
「私は麻雀プロだ」
成岡は、自身の麻雀戦術の驚くべき内容を語り始める。
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の冒頭はこんな感じで始まる。
本書も、第一級麻雀プロ成岡と第一線麻雀ライター福地のインタビューを中心に構成されている。「成岡に文章を書かせるのは至難の業。またツイッターで炎上?宣伝になるから、むしろOK」という説も噂されているが、この奇抜さがストリーミングチックな臨場感を演出したと言えるだろう。
麻雀というよりは成岡という打ち手の解説本
現代麻雀の戦術を要約すると「先制リーチ有利」「基本リーチ」「後塵を拝したらオリる」「打点よりテンパイ速度」に、だいたい収まると思う。これらに、局収支やアガリ・振り込み率を考慮した押し引き判断が加わる。統計データを組み込んだ戦術もよく用いられている。つまり、現代麻雀では、
シンプルで明快な戦術論が好まれる
と言うことである。じゃあ、
状況判断は?読みは必要ないのか?
不要ではないが、優先度はかなり下がっている。
麻雀はアガらないと意味がない。アガリの技術を最優先することは当然である。
その通りである。また、そのような考えのほうが多くの人に受け入れられ、支持されやすいだろう。
成岡は、そんな現代麻雀とは別世界の住人である。闇の眷属、じゃなくて、競技麻雀の人間である。しかも、数ある麻雀団体のトッププロたちが参加する101競技連盟の上位に属する人間だ。
本書は、そんな成岡の「麻雀イズム」を紹介する成岡解説本である。最初に紹介したように、インタビュー形式が中心である。内容は神秘に満ち溢れているが、文章は柔らかく読みやすい。そして面白い。さすが、福地誠である。
立ち飲み屋の与太話を立ち聞きするノリで読む。
本書の由緒正しい読み方だと確信する。戦術書というよりも読み物に近い。難しいことを考えることもなく、スルスルとあっという間に読み終わった。だいたい2時間弱といったところか。
麻雀力を目醒させるキーワード
本書にはいくつかのキーワードが存在する。そのままの言葉使いではないが、だいたい次の通りである。
「山読み」「人読み」「手牌読み」「状況判断」「受けの七対子」「ゲームメイキング」
はしてた現代っ子、特にネット麻雀がフィールドの雀士はどのように受け止めるだろうか?
「読み合い」の話がたびたび出てくるが、それも同様に読み合いができるメンツと卓を囲んでこその話である。
気功の遠当ては、気を当てる相手も気の使い手じゃないと効果がないと言われている。
気功の遠当て
麻雀の読みも、それと似ている。相手に相応の技量が無ければ「暖簾に腕押し」「糠に釘」である。
読みに意味は無いのか?
自分はそんなことは無いと思う。トッププロたちがどのような思考のもとに、打牌を選択し、ゲームを作っていくのか。その思考のプロセスと過程を十分堪能できるからだ。本書を読み進めるうちに、成岡の凄さはもちろんのこと、他のトッププロの凄さも同時に伝わってくる。
もしかして、麻雀プロってすごくね?
である。たしかに、牌効率は大切だ。だけど、それだけじゃ物足りないと思う。もっと貪欲になって良いはずだ。
温故知新という言葉の通り、昔からあるものが悪いとは限らない。おざなりにされ、(たぶん)意図的に意識外に置かれてきた「場況判断」や「読み」の領域に、再び光が射してきた。
成岡本は、麻雀戦術のオーパーツを掘り起こすことに貢献した?
僕はそう思った。あとは読み手の判断にませることにする。
まとめ
簡単ではあるが感想はこんな感じである。戦術書としての価値は、はてなマークが付くが、読み物としては上々のできだと思う。成岡という素材が逸品だったのは間違いないが、文章おこしと読者視点に立ったツッコミ役を担当した福地の功績は大きい。
話題のチートイツに関しても、読んだところで技術が向上するとは自分は思わない。しかし、新しい意識を芽生えさせ高まるきっかけを得る一助となるのは間違いないだろう。今日明日の成果は期待できないが、これを機に読みの世界に目を向けてみて一皮むけた雀士への脱皮を図ってはどうだろうか?
最後に、状況判断重視の自分としては嬉しいが、一日の長のアドバンテージを脅かすような本書は厄介だ。このままそっと草葉の陰でおとなしく眠らせておいて欲しかったな。寝た子を起こしてはいけないよ(笑)
[amazonjs asin="4800308380" locale="JP" title="神眼の麻雀 山を透視して勝つ技術"]
追加
個人的に一番面白かったのは、「読みを狂わせる手順」だった。私生活で人を騙すのは苦手だけど、麻雀で人を騙すのは大好きなので。
読んで、読ませて、大いに騙す
グレート!(ジョジョ第四部の影響)
嵌めて嵌めて嵌めまくるのも麻雀の醍醐味の一つだと思います。
おまけ~成岡本はチートイツ本?
成岡本とチートイツについて、自分がツイッターでつぶやいたつぶやきです。
まとめるのが面倒なので、そのまま載せました。参考になれば幸いです。
成岡本は、七対子本じゃないし、読んでも七対子のアガリが上手になるわけじゃないと思う。今まで意識されていなかった七対子の利用方法が掘り起こされ、注目されたせいで、「七対子が~」が一人歩きしてしまったのかもしれない。そんな自分も七対子ネタを楽しんでいるから、ごめんなさいですw
— タケオしゃん@麻雀イキりセラピスト (@nyankosan) April 24, 2016
今日のチートイツ
ここから... pic.twitter.com/hpctywnryg— タケオしゃん@麻雀イキりセラピスト (@nyankosan) April 15, 2016
(続き)こうなります(ΦωΦ=) pic.twitter.com/pq9rsmalBQ
— タケオしゃん@麻雀イキりセラピスト (@nyankosan) April 15, 2016
チートイツを狙ってる時は、だいたい受けに回ってることが多くて、まあ、つらい状況なわけですよ。だけど、劣勢を一気にひっくり返す可能性を秘めているところがチートイツの魅力でもあり、好まれる理由なのかもしれない。と、成岡本に書いてあったかも...うそです。書いてません(ΦωΦ=)
— タケオしゃん@麻雀イキりセラピスト (@nyankosan) April 15, 2016
成岡本がチートイツの指南書のような勘違いツイートが流れている。赤無しルールにおけるチートイツは、攻防一体の手役として好まれる。僕も好きだし、成岡本が出る前からチートイツのメリットを説いてきたつもりだ。でも、天鳳の場合は適度にほぐしたほうがいい塩梅だったりするから面白い(ΦωΦ=)
— タケオしゃん@麻雀イキりセラピスト (@nyankosan) April 13, 2016
成岡本に「成岡はチートイツを嗜む」みたいなことが書いてあったよ(ΦωΦ=) pic.twitter.com/ZqKbbX2UNz
— タケオしゃん@麻雀イキりセラピスト (@nyankosan) April 8, 2016